令和3年度司法書士試験筆記試験 
基準点の発表を受けて
 

 8月16日、法務省ホームページにおいて、令和3年度(2021年度)司法書士試験筆記試験択一式の基準点等が公表されました。

 公表された基準点は次の通りです。
 午前の部:満点105点中81点
 午後の部択一式:満点105点中66点
 午前または午後択一の点数のいずれかが基準点に達しない場合にはそれだけで不合格となります。

 基準点以外に公表された資料は次の通りです。
 受験者数:11,925名(昨年比103.7%)
 本年も、午前の部・午後の部択一式ともに、平均点の発表はありませんでした。
 ※辰已法律研究所の計算によると、午前の部の平均点は64.75点、午後の部択一式の平均点は45.68点でした。

 また、択一式の正解も公表されました。本年も複数解や正解なしの問題はありませんでした。

 さらに、「令和3年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数累計表」も公表されています。

 これらについては、法務省ホームページをご覧ください。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00405.html

【資料&分析】
 次の表は、今年も含めた過去7年の午前・午後択一式基準点に関する資料です(辰已法律研究所作成)。

択一式基準点に関する資料(過去7年)

 令和3年度は、午前の部の基準点が81点(27問)、午後の部択一式の基準点が66点(22問)となりました。午前の部は昨年より6点(2問)上がり、午後の部は昨年より6点(2問)下がっています。

 上記のように、午前の部の基準点は81点(27問)で昨年より6点(2問)上がりました。辰已法律研究所が行ったWEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、午前の部では、憲法・民法が易化、刑法はほぼ昨年並み、商法は昨年よりやや難化(それでも例年並み)という結果が出ています。憲法の易化は明確ですが、その他の科目は過去数年と比較をして特筆すべき難易度とはいえません。出題形式としては、組合せ問題が34問(昨年35問)、単純正誤問題が1問(昨年0問)、個数問題が0問(昨年0問)、会話形式の問題が2問(昨年4問)ということで、前年度からの大きな変化はみられませんでした。
 一方、午後の部択一式の基準点は66点(22問)で、72点(24問)となることが多かった近年の午後の部択一式の基準点としては平成31年(令和元年)と並ぶ低い点数となっています。WEB択一再現に基づく科目別平均正答率によると、いわゆるマイナー科目の中では、民事執行法と司法書士法が易化。主要科目では、不動産登記法が難化(最近では特に難しかった平成31年に次ぐ難度)、商業登記法は昨年よりやや易化したものの近年の中では難しい方に属します。そして、これら登記法科目の難しさが基準点低下の要因と思われます。不動産登記法においては通常のテキストでは見かけないような出題テーマもありましたが、それらは正答率も非常に低く、合否結果への影響力も低いと考えられるので、受験生としては来年以降に向けて過度に意識をする必要はないと考えてよいでしょう。午後の部の出題形式をみると、組合せ問題が34問(昨年33問)、単純正誤問題が1問(昨年2問)、個数問題が0問(昨年0個)、会話形式の問題が1問(昨年3問)で、午前の部同様、こちらも大きな変化とはいえません。

 科目ごとの難易度の変化はありましたが、全体としてみると、午前・午後を通じて前年度からの大きな傾向変化はみられませんでした。コロナ禍2年目の今年は、昨年のような試験延期もなく、出願者数も若干ではありますが増加に転じました(平成22年以来の久しぶりの増加)。例年との大きな違いとしては、前年の試験日から今年の試験日までの日数が少なかったということが挙げられます(例年より約3か月短い)。それにより、前年の試験後も休まずに勉強を継続した受験生が例年より多かったと思われ、それがプラスに作用した人もいることでしょう。試験科目が多く、しかも択一式と記述式という異なる形式を同じ試験時間内で処理しなければならない司法書士試験においては、前年の試験対策で身につけた力を維持するということも大事です。特に今年は、不動産登記法が択一式・記述式ともに難化をしたので(記述式は記載量の多さ)、それらを時間内に上手く処理できたかが合否に影響すると思われます。

 次に、基準点到達人数をみると、午前の部は昨年より134名減り、対受験者でみた基準点到達者の割合は29.4%と昨年よりは下がりましたが、それでも過去10回の本試験の中では昨年に次いで高い到達者数・到達率です。午後の部択一式は、基準点自体は昨年より下がりましたが、到達者数で281名、到達率でも1.7%ほど昨年より上がっています(基準点に達し易かったということ)。昨年は午前と午後択一との間で到達者数・到達率の差が大きくなっていましたが(午前のほうが基準点に達し易い)、今年はそれらのバランスを少しだけ戻したような結果となっています。
 択一式基準点は午前の部・午後の部択一式双方での高得点者の「重なり」の調整結果です(下の表の中でDの数値のみ安定している点に注目)。よって、重要なのは記述式の採点をされたのが何人か、受験者数の変動に伴ってこの人数に変動があるのかということであり、これについては10月11日の法務省の発表を待って当欄に数値等の追加をいたします(上記「重なり」が判明しない段階での、偏差値等に基づく推測的なコメントは当研究所では差し控えます)。

択一式基準点到達人数に関する資料(過去7年)

 最後に、「令和3年度司法書士試験筆記試験(多肢択一式問題)得点順位別員数累計表」をもとに、辰已法律研究所が作成した得点分布グラフを見てみましょう。
 上記のように、午前の部の基準点は昨年より6点(2問)上がりました。問題の易化を反映して、満点も29名と多く、全体として高得点側に大きくスライドしたグラフとなっています。
 午後の部択一式は午前の部と対照的で、低得点側にスライドしています。特に30点以下の得点者の人数が大きく伸びたグラフとなっています。グラフの形としては、高得点域と低得点域にそれぞれ山があり、低得点域の山のほうが高いという、午後の部択一式の例年通りの形を維持しています。
 問題の難易度は常に安定しているわけではなく、午前も午後も、昨年と今年のように、6点(2問)くらいの基準点の変動は覚悟しておく必要があります。しかし、グラフを見れば分かるように、得点ごとの員数分布の形は例年大きく変わることはないので、他の受験者のことは気にせず、自分自身の得点を伸ばす勉強を心掛ければ、確実に合格に近づくことができます。
 来年の試験がどのような状況で行われるかは現時点では分かりませんが、今年の試験結果に、来年以降の出題傾向を大きく変えるような要素は見受けられません。

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